オリオールの乙女



「ノエル様!!」

召使いの女が、慌てたように叫んだ。彼女を呼ぶ声は、城内に虚しく響いた。

「あら、どうしたの?」

そう言ったのは、十五年の年を経たディディエだった。彼女の美貌はいまだ健在であり、民衆たちからの名声も高い、立派な女王として国の頂点にいた。

「ディディエ様!またノエル様がお城の外へ!」

召使いはあちこちを走り回ったせいで、鼻息を荒く、顔を赤くさせながらそう言った。それを聞いたディディエは、くすりと笑った。

「お言葉ですが、ディディエ様、笑い事ではございません!一国のプリンセスとあろう者が、そのような素行など!お母上として、お咎め下さいませ」

「そうね、ありがとう、マーレ。信頼しているわ」

ディディエはそう言うと、大きなステンドガラスの窓を見上げた。ルカッサ王国は、今日も平和だ。耳を澄ませば、鳥のさえずりに混じって人々の幸福な鼻歌が聞こえる。

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