オリオールの乙女
海の香りがする。
ノエルは見上げるようにして、その人物を見上げた。
黒い髪、浅黒い肌、漆黒の瞳……。
彼は、温かい瞳で、ノエルを見つめていた。ノエルは何も言えず、彼を見つめていた。
「待たせたな」
低い彼の声が、ノエルの胸にじわりじわりと溶けていくように響き渡った。
ノエルは、麻痺してしまったようだった。その場からぴくりとも動けなくなってしまっていた。
ギルは、すかさずノエルを抱きしめた。彼の逞しい腕が、ノエルの体を心ごとすっぽりと包んだ。
「ごめんな……」
ギルの声が、自然とノエルの涙を流させていた。
ノエルはようやく頼れる人に胸を預け、これまでの寂しさや恐怖や不安を吐き出すように、涙を流した。
ギルは、全てを受け止めるようにノエルを更にぎゅう、と抱きしめた。