オリオールの乙女

ノエルはただ息苦しかった。男ががっちりとノエルを拘束している。広場が、みるみるうちに遠ざかっていく。

「へへ!間違いねえ!さっき見たんだ、シルバーの髪を!こいつは高く売れるぜ!」

人攫いは上機嫌でそう言った。

すると、一匹の竜のような、蛇のような生き物が人攫い目掛けて空から突っ込んできた。

「うわあ!?」

ルカッサにはいない生物だ。人攫いはびっくりすると、思わずノエルを離した。

「しめた!」

ノエルは素早く走り出した。ドレスが邪魔でうまく走れない。裾をたぐりよせ、ノエルはレンガ畳みの細い路地裏を必死に走り出した。

「待て!!」

人攫いの声だけが後ろでする。振り返ると、先ほどの竜のようなものが人攫いに攻撃をしていた。彼の弱弱しい悲鳴のようなものだけがかすかに聞こえた。

ノエルは思わずその光景を見て笑ってしまった。

「うふふ!ラッキーだったわ!」

しかしそれも束の間、目の前からは彼の仲間とおぼしき男が待ち構えていた。

< 9 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop