オリオールの乙女
ノエルはただ息苦しかった。男ががっちりとノエルを拘束している。広場が、みるみるうちに遠ざかっていく。
「へへ!間違いねえ!さっき見たんだ、シルバーの髪を!こいつは高く売れるぜ!」
人攫いは上機嫌でそう言った。
すると、一匹の竜のような、蛇のような生き物が人攫い目掛けて空から突っ込んできた。
「うわあ!?」
ルカッサにはいない生物だ。人攫いはびっくりすると、思わずノエルを離した。
「しめた!」
ノエルは素早く走り出した。ドレスが邪魔でうまく走れない。裾をたぐりよせ、ノエルはレンガ畳みの細い路地裏を必死に走り出した。
「待て!!」
人攫いの声だけが後ろでする。振り返ると、先ほどの竜のようなものが人攫いに攻撃をしていた。彼の弱弱しい悲鳴のようなものだけがかすかに聞こえた。
ノエルは思わずその光景を見て笑ってしまった。
「うふふ!ラッキーだったわ!」
しかしそれも束の間、目の前からは彼の仲間とおぼしき男が待ち構えていた。