ダイヤの原石
それでけでもひとつの救いだった。


ふと、突然ドン、と誰かにぶつかった。


下を向いて歩けばいつかは必ず誰かにぶつかるだろうと思ったが、謝ってなんとか乗り過ごすつもりだった。


「ご・・・ごめんなさい。」

返事がない。


そのまま通り過ぎようとした次の瞬間、私は長い髪の毛をわしづかみにされていた。

「いたっ!」


「おい高峰~!こんなところに幽霊がうろつくんじゃないぜ~?」

書道部顧問、丸澤だった。

丸澤が私の髪を上に持ち上げたまま顔を覗き込んで言ってきた。


「すいません・・・。」



丸澤は私の髪を手から離し、何も言わずそのまま通り過ぎていった。


少し歩いたところで「あとその長い髪切っとけよー」と私に背を向けたまま言った。

そう。


教師なんていつもこんなだもの。



教室でどんなことがあったかなんてわかってるくせに、何回も見てるくせに、何事もなかったような態度で接する。

口だけの先生はいらない。
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