ダイヤの原石
あたしは帰る場所をなくしたも同然。


友達はいたけどどこもお泊りはだめだって親に言われると断られ、通りすがる人たちからは可哀想にとひそひそ話しながら通り過ぎてゆく。


あたしはやっと分かった。


あの日に多くのものを失ったのだと・・・。


あたしはなぜあの日に多くのものを失うはめになったのか考えてみた。


でもわからなかった・・・。


それももしかしたら意識が朦朧としていたからかもしれない」


歩夢はそばにあった小さな石ころを取った。


「あたしは憎んだ!

母を!父を!通りすがるあたしのことを何も知らずにひそひそと囁く人たちを!神を!」


歩夢は持っていた石ころを小川へ勢いよく投げつけた。


ぱしゃっと音をたてて水がはねる。


「・・・でもどれだけ憎んでもあたしは何も取り戻せないことはわかっている」


俺はすごく罪悪感に陥った。
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