ダイヤの原石
そして遥夏は両手を広げて歩夢の背中に回す。


歩夢の手からナイフがぽろっと落ちる。


カシャーンと音を立ててナイフが地で跳ねた。


歩夢はどうしていいのかわからず戸惑っていたが、ゆっくりと遥夏を抱きしめ返した。


「・・・ごめんな。おまえにずっとこんな人生をおくらせて・・・」


歩夢は目を潤ませて下唇を噛み締め、顎を震わせて我慢をしていたが、耐え切れずに声を出して泣いた。


遥夏はゆっくりと体を離す。


「・・・本当にごめんな」


歩夢が首を振る。


「あたしは言ったでしょ・・・。


ただ少しの時間でもいいから遥夏と一緒にいたかっただけだって・・・。


あたしが今まで生きていた理由は二つだけ・・・。


遥夏とまた一緒にいたかったこと。


あの時のことを償わなくてもいいからただ謝ってほしかったこと・・・
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