ダイヤの原石
視界がぼやけてよく見えない。


左を向いても右を向いてもぼやけている。


でもここは家ではないことは確かだ。


ようやく視界がはっきりしてきた。


目の前でゆらゆらと何かが揺れている。

私は意味もなくそれを目で追う。


「千尋!気付いたな」


揺れていたものがフッと遠ざかり、代わりに椿の顔が視界に入った。


椿・・・。


千尋って私の名前を呼んだの、初めてじゃん。

「随分とうなされていたぞおまえ」


遥夏は?


ゆっくりと左右を見る。


「遥夏は別室にいる。


あいにくながらも俺も别の部屋で看護されている」

椿は私が思ったことを以心伝心のように何でも見通すことができる。


そんなに私はわかりやすい人間なのだろうか。
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