ダイヤの原石
『トイレ掃除楽しみだね』


そして下に小さく『逃げんなよ』と殴り書きされてあった。

愛莉たちの高笑いがクラス中に高鳴った。


3年生の使用していた教室や、更衣室、下足場など、それぞれ決まったところへ皆が移動する。


もちろん私も。

重い足取りで校舎の端っこにある3年用の女子トイレへと向かう。


トイレの前で一度立ち止まり、愛莉たちの声がするかどうか耳をすませた。

トイレからは何の音もしない。


よし、と思い静かにトイレのドアを開けて入る。

何年も使われているせいか、電気が少し弱くなり、薄暗くなっている。


それ以外なんら変わったところはなく、安心してトイレの掃除道具を取りに掃除道具入れに手をかけたその時だった。

「あらありがとう。あたしたちの掃除道具を取ってくれるのね~。」


今気付いても遅いのだがドアの閉まる音がしなかった。



つまりトイレに入る前から私のうしろでずっと見ていたわけだ。


「そうね~とりあえずパーッと水をまかないといけないわね。バケツをとってちょうだい。」

静かに愛莉は私に向かって取れというように手を差し出した。


私は少しためらいがちに掃除道具箱からバケツを取り出した。


そしてゆっくりと愛莉たちのほうへ渡そうとする。

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