ダイヤの原石
「よく頑張ったわね・・・。」

私の濡れてぐしゃぐしゃになった頭をなでながら優しく言ってくれた。



私は大抵の怪我ではすぐに保健室にいかないタイプだった。

むしろ誰かが足を擦り剥いて血がちょっと出ただけですぐまわりの人が保健室に連れて行けなんて言っていることが大袈裟すぎると思ってた。



だから私は調理実習のとき包丁で指をパックリいっても、体育の跳び箱で6段を跳び、派手に落ちて肩を骨折したときも、理科の実験で手の甲を火傷したときも保健室にはいかなかった。


いや、肩を骨折したときは帰って親に左腕が垂れ下がっていることに気付いてもらうまで自分では気付いていなかっただけなのかもしれないけど。



何にしても保健室にはいかなかったから、こんないい先生がいたことを私は知らなかった。


と、なんやかんやで今の下校の時間に至る。

このガーゼも長谷川にしてもらった。


口の中の傷は念のため病院に行って調べてもらったほうがいいとのことだった。



「・・・・・・・・・・・。」


私はガーゼに当てていた手を髪に移した。

この乾ききっている髪も長谷川が乾かしてくれた。


そうこう今日あったことを思い返してみると、また涙が溢れてきた。


まわりの人に見られるのが嫌で私は俯いて走った。


そして角を曲がったその時だった。

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