ダイヤの原石
「姉ちゃんどしたん？」



いつの間にか隣でイスに座り、小さいフォークとスプーンを両手に持った千恵がほっぺにケチャップをつけて聞いてきた。


「ん？何が？」


千恵の首に巻いてあるナプキンでほっぺのケチャップを拭き取りながら聞いた。



「姉ちゃんずっと変な顔してお口だけ動かしてるから壊れちゃったのかと思った。」



「え、そうだったの？」


そう言われて自分がどんな顔をしていたのか想像がつかなかった。



「そういえば千尋ー、あんた前髪そろそろ切ったほうがいいわよ～？」


母さんが自分の作り終えた朝ごはんを運び、向かい側の席に座りながら言った。


「いいの、このままでいいの。」


「だってあんたいつもマスクと前髪してたらはたから見ると怖いし、目も悪くなるわよ？とゆうよりもう悪くなってるんじゃないの？」



その質問には答えず、食べ終えた朝食のお皿を台所に持っていき、そのまま洗面所に入った。



「姉ちゃん怒った？」


「お姉ちゃんはね、きっと今反抗期なのかも！」



心配そうな顔をして聞いてくる千恵に母は優しく答えた。


仕度を済ませ、いつもどおりマスクをして玄関で靴を履く。



「いってきます。」

「いってらしゃーい。」


奥のリビングから千恵の声がした。

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