ダイヤの原石
いつもどおりの道をいつもどおりの早足で歩く。


歩くたびに結んでいるポニーテールがゆらゆら動くのが自分でもわかる。


近所のいつも朝、花に水遣りをしているおばちゃんが振り向いた。

「あらおはよう、千尋ちゃん。」

「おはようございます。」


早歩きのまま小さくお辞儀しながらその場を通り過ぎ、また真っ直ぐ前を向いて歩く。


だんだんと学校に近くなってくるにつれ、同じ学校のかばんを持った生徒がよく見えてくる。


おはよう、おはよう、という声がところどころで聞こえる。


この学校の象徴である花で囲まれた大きな校門をたくさんの生徒がくぐって登校する。


だが、今日はいつもより人が少ない。

なぜならつい昨日3年生がこの中学校を卒業したばっかりだ。


私はあと数日で中学2年生になろうとしているのだ。


昨日、卒業式で泣いた在校生は思ったより結構いた。

2年生ほどではないが、私たち1年生の中にも数人泣いていた。


きっとチームワークの大事な熱血バスケ部とか、野球部とか、そこらへんだろう。


私を含む書道部には絶対と言っていいほど先輩のために泣いてる人はいないだろう。
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