ダイヤの原石
「聞いてんのかっつってんだよ!」


語尾を荒く吐き捨て、私の胸倉をつかんでぐいっと引き寄せた。

愛莉の顔との距離がほんの数センチしかないぐらいに縮まった。


「う・・・ぐぅ・・・。」


胸倉をつかまれて体勢が悪く、苦しい声が出る。



「あんまりうちらのことなめてもらっても困るのよ。」

愛莉は目を見開いて静かにそう言ってそのままばっと私を投げ放した。


小さく荒い呼吸が自然とでる。


少しずれたマスクを直し、前髪をきちんとおろす。


「その髪、そろそろ切ったらどお?」


集団でぞろぞろと教室から出ながら愛莉が大きな声で叫ぶ。


そしてドアから出るところで振り返ってニヤリと笑ってこっちを見た。


「あたしが切ってあげてもよくてよ?」

キャハハハハと高い声をあげながら5人は教室からでていった。


すぐそこで横たわっているイスを拾い、自分の席へと戻し、座った。


私は背が小さくて静かで見た目が暗くて長くて気持ち悪い髪が目障りだという理由で彼女たちにいじめられる的となった。


毎日がこんなんだといい加減私もストレスが溜まる一方だが、私は心の内では怒ってても表には出さず、常に冷静であることを美華先輩と卒業する前に約束したのだからいつまでも冷静でいることを誓った。


だから私は内心は怒ってても表にださないように常に意識している。



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