ダイヤの原石
椿と遥夏は軽々と、私は手助けをしてもらいながらテニスコートのフェンスを飛び越えて辺りを見回す。



とくにこれといってボロい家など見つからない。



ごく普通の家なら数件見える。



「ねぇ・・・ない・・・・・・よね?」



目を凝らして最終確認でもう一度全体を見ながら自信なさげに言う。



「あぁ、俺もそう思う」



「何も運動場側だとは限らない。



校門のほうに行ってみよう!」



遥夏がそう言って校門の方へ走り出した。



私と椿が遥夏の後を追う。



「ねぇ!私この学校に通っててボロい家なんて今まで一度も見たことないんだけど!!」



走りながら一応椿に対して言った。



「んなの俺だって見たことねぇよ!」



椿はこっちを見向きもせずにそう言った。
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