アイツは私の初彼氏
しばらくの間の後、克幸は大きくため息をついた。
「分かった、俺が悪かった」
いつも何かでケンカしても、大抵先に謝るのは克幸だ。
今回も、先に折れてきた。
けど当たり前だろ?
突然してきたのはコイツなんだし。
ちょっと目を伏せてしおらしい様子だけど、別に可哀想だなんて思ってやらないんだからな。
「悪いと思うならもうするな」
「……」
「約束出来るな?」
沈黙を了承と受け取った私は、克幸と塀の間から抜け出して歩き始めた。
後からアイツも付いてきている気配がする。
夕方の時間とはいえ、細い路地は人通りがほとんどない。
沈黙の間に私達は隣同士の家に着く。
私は内心ムカついた気持ちのまま、家の門扉を開けた。
「じゃあな」
「……約束は出来ない」