アイツは私の初彼氏
相手に誘導され、その場をズルズルと引きずられる様に離れてゆく。
言い争っている女の子達の声が、段々と遠ざかった。
「もう、大丈夫だろ」
耳元で低く声がして、口元の手が離れた。
振り返らなくても、もう相手が誰なのか分かっていたけど、私は確信を持ってソイツを見た。
「―――克幸」
「ホント、女は怖えーな。すぐ集団になる」
「何しにきたんだよ」
今まで私の事避けてたくせに、何で急に現れるんだよ。
「助けにきたんだよ。お前が女共に連れてかれたって三上が言うから」
「アキラが……ったく、大げさなんだよ」
「でも、余計なお世話だったよな。さおには、俺なんかじゃなく……」
そこで、克幸は言葉に詰まった様に口を閉ざした。
「何だよ。『俺なんかじゃなく』?」
「―――高木と付き合ってるのか?」
「……はぁ?」
言われた事に一瞬理解が遅れて、思わず声が出てしまった。
克幸までそんな事言うのかよ!