アイツは私の初彼氏
「よしっ!」
冷たい水で顔を洗う。
それだけで、身が引き締まった様な気がした。
服は昨日から制服のままで、着替える時間なんて考えられない。
玄関に向かって靴に足を突っ込むと、外に飛び出した。
「なっ……、さお?」
どのくらいの時間が経ったんだろう。
門の前に立ち続けて待っていた私を見つけた克幸が、驚きの声を上げた。
「おはよ」
「あ、ああ。はよ」
「今から朝練行くんだろ?」
「そうだけど……」
私は門から中に入ると、克幸の前に立ちふさがる。
「けど今日は、悪いけど私に付き合ってもらうからな!」
「……えっ?」
呆気にとられる克幸の腕をつかむと、有無を言わせず目的地に引っ張って行くことにした。
「おい、さお!どこ行く気だよ!」
「いいから黙ってついて来い!」
私が強引に歩き始めると、どこへ向かうかぐらいは分かった様で、大人しくついて来ている。
目的地は、昔からよく遊びに来ていた近所の公園だった。