アイツは私の初彼氏
霧がかったような空気の漂う早朝の公園には、幸い誰もいなかった。
「……それで?何か話があるんだろ?」
「うん、ある」
ベンチに座りながらそう言うと、克幸も少し離れた隣に腰を下ろす。
私は再び口を開く前に、深呼吸をした。
「―――私、克幸に昨日言われた事、ショックだった」
「昨日……?」
「『しばらくは話せない』ってヤツ」
「ああ……、言ったな」
「この前避けられてた時は、奏真の事で克幸との約束を破った気持ちもあったからあんまり強く出れなかったけど」
「……」
「今度は違う」
私は両手にぐっと力をこめる。
「昨日、奏真が言った事は嘘だ。私と奏真は付き合ってなんかない!」
それは、あの時驚いて口に出来なかった言葉。
思いを込めて、私は克幸の方を真っ直ぐ見た。
「けど、さおは高木の事が好きなんじゃないのか?」
克幸は目を合わせない。
じっと目線を地面に落としている。