アイツは私の初彼氏
「違う!アイツの事なんて好きじゃない!」
「自分で気付いてないだけかも知れない。さおは……鈍感だからな」
「バカにすんなよ!それくらい分かる!」
「へぇ……鈍感じゃないってんなら、昨日何で俺が怒ったかなんてのも分かるよな?」
克幸の挑戦的な目線が私を捉える。
私は思わず、息を詰める様に歯をかみしめた。
「そんなの……」
「分からないよな」
克幸は呆れた表情で苦笑する。
何か、腹立ってきた。
「分かんないよ!勘違いされて怒りたいのはこっちなのに、何で分かるんだよ!」
思わずそう叫ぶ。
「俺……前に言ったよな?『さおとしかああいう事する気はない』って」
それって、あのキスの事だよな?
1度目は帰り道、2度目は克幸の家、3度目は教室での……。
「それが、どういう意味か分かるか?」
意味……。
克幸が何度も私にしたキスの意味は?
分からないわけじゃない。
けれど私は、克幸から決定的な言葉をもらってない。
その意味に答えを出すほどの言葉を。