アイツは私の初彼氏
「遅くなって悪い。帰るか」
部活終わりの克幸が教室に迎えに来て、私達は学校を出た。
夕暮れから夜に変わって行こうとする時間を、ゆっくり二人で歩く。
他愛ない話をしている途中で、克幸が不意に手を繋いできた。
「かっ、克幸?」
「夢だったんだよ、お前とこーするのが」
「……あーそうですか……」
恥ずかしさのあまり、私が棒読みでそう答えると克幸はこらえる様に笑った。
「からかってるだろ」
「いやいや、嬉しい反応だと思って」
「……好きにしてくれ」
家の前に着くと、手を離そうとした私を克幸が引き止める。
「―――なぁ」
「ん?」
「改めて、誕生日おめでとう」
「あ、すっかり忘れてた」
克幸に『しばらく話せない』と言われたあの日が私の誕生日だったけど、それどころじゃなかったよな。
「あんな言い方したから言い直したかった」
「うん、ありがとう。克幸は明日だよな」
「それなんだけど……プレゼント、もう一つ追加もらってもいいか?」
「えっ?」