アイツは私の初彼氏
「……さお?」
戸惑った様な克幸が振り向いて目があった時、私は克幸の腕を掴んでいた。
ところが、
「―――っ!」
間近で見た瞬間、昨日の記憶がリンクする。
息もまともに出来なくなりそうな、あの真剣な眼差しの克幸と。
ドキン、と大きく心臓が脈打った。
浅い呼吸を何度も繰り返す。
首の後ろから熱を帯びてくるのを感じた。
反対に背中は冷たい汗が流れてゆく。
私は思わず、ごくりと唾を飲み込んだ。
「どうかした―――」
克幸が何か言おうとしたとたん、私は掴んだ手を離すと来た道を帰るように走り出した。
「おいっ、さお!」
後ろで克幸の声が聞こえたが、今はそれどころではない。
とにかく逃げたかった。
誰もいない様な所ってどこだろう?
私は無我夢中で階段を駆け上がり、気がつけば屋上にたどり着いていた。