アイツは私の初彼氏
「はぁ、はっ……」
呼吸を落ち着けながらフェンスの方に行くと、それを背にして座り込んだ。
落ち着いてくると、自分の今の行動の怪しさに自分で驚く。
克幸を捕まえたら昨日の話をして、どういう事なのか問いただそうと思っていたのに。
実際は正反対の事で。
逃げてきてしまったなんて。
「何だよ私、何がしたかったんだよ!」
その時、バタンと勢い良く屋上の扉が開いた。
「さお、お前……はーっ、何のつもりだ」
顔をあげると、走ったのか息を乱した克幸が立っていた。
「か、克幸っ!」
私は、反射的に立ち上がると後ろに下がろうとした。
ガシャンと背後で音がする。
そうだ、後ろはフェンスで行き止まりだった。
「走って来たと思えば、人の顔見るなり逃げて……逃げるのは、分からんでもないが」