アイツは私の初彼氏
「さお、ありがとな」
克幸はポンと私の肩を叩いた後、身体を離す。
「俺は今、それだけ聞けたら十分だ」
そう言って目が合うと、とても優しい笑顔を浮かべた。
「―――っ」
その顔を見た途端、一瞬喉の奥が締め付けられる様に苦しくなるのを感じた。
心臓がはっきりと音をたてて鼓動する。
なんだ、これ?
こんなの知らない感覚だ。
泣きそうになる前にひどく似ている。
「じゃあ、俺は部活があるからそろそろ行く」
そう言って克幸は、私を残したまま屋上を去った。
それだけ聞けたらいいってなんだよ。
自分だけ納得して終わるなっての。
私の心の中は、ひっくり返ったオモチャ箱みたいにワケが分からないってのに。