アイツは私の初彼氏
克幸が去ってからしばらく屋上の風に吹かれていた私は、気持ちが晴れないまま教室に戻った。
「お帰り、さお」
「……アキラ」
そこには、携帯を手にぼんやり座っている旭がいた。
「今日は、彼氏迎えに来なかったのか?」
「んー、先帰ってって言ったの」
「何で」
私がそう言うと、旭は携帯からと私の顔へと目線を上げた。
「どうだったの?」
「どう……って?」
「さっき、ホームルーム終わった後すごい勢いで出てったじゃない」
私は思わず苦笑いを浮かべる。
それだけで旭にはピンと来たらしい。
「何か言おうと意気込んだものの、何も言えなかった?」
「うっ。何で分かるんだよ」
すると、旭はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「見てたもの。廊下の一部始終」