アイツは私の初彼氏
克幸んちに……?
さっきの事もあって、私は少し戸惑う。
けれど、母さんはそんな事お構いなしだ。
「あんただって知ってるでしょ?これ、かっちゃんが気に入ってくれてるのを」
何なら家に呼んでもいいんだけどね~、と母さんは言う。
ちなみに『かっちゃん』は克幸の事だ。
「わ、分かった!着替えたら持って行くから!」
本人ここに呼ぶより、家に持って行く方が合う確率が少ない!
おばちゃんが出るかもしれないしな。
私は慌てて部屋に上がると、パーカーとジーパンに着替えてまた下に降りた。
『ピンポーン』
伊波と書かれた表札の下にあるチャイムを鳴らす。
しばらく待って、もう一度押してみた。
「あれ?おばちゃん、居ないのかな」
克幸の母さんは観劇が趣味で、時々夜の部を見に行く事がある。
今日もそうかもしれないな。