アイツは私の初彼氏
「克幸もまだ帰ってないのか」
多分部活が長引いてるんだろうけど。
仕方ないので家に戻ろうとした時、
「さお?」
振り返ると、バッグを担いだ克幸が立っていた。
「克幸……」
克幸は私が手に持っているタッパーを見て分かった様で、少し笑ってみせるとすぐに鍵を開けて私に入るように促した。
「これ、受け取ってくれたら帰るから!」
けれど私は慌てて入れ物を差し出す。
「上がっていけよ」
「いいよ……」
2人だけなんて、何か気まずいし。
「いいから」
克幸はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、グイッと腕を引いて玄関に入った。
「お、おじゃまします」
「ぶ、なんだそれ。いつもこんばんわー!とかって入って来るくせに」
克幸が笑いながら玄関の電気をつけた。
「う、うるさいな……」
パッと光がついて、こっちを見て笑っていた克幸とまともに目が合う。