アイツは私の初彼氏
「これ置いたら帰るからな!」
さっさとツッカケを脱ぐと、勝手知ったる風で伊波家のキッチンに入った。
隣同士の家だからか、作りもウチんちと似てる。
それに、幼い頃から何度も出入りしているから自分ちに似た感覚だ。
キッチンの電気をつけて冷蔵庫にシチューを入れようとした私の手を、克幸が止める。
「今日母さん遅いから、何か食っとけって言われてる。だからそれ今食うから」
克幸は鍋を取り出すと、シチューをそこにあける。
小さく火をつけると、入れ物をシンクに置いた。
「……じゃあ、私はそろそろ帰る」
今度こそ帰ろうとした私の手を、克幸がとる。
「1人で食うのサミシイんだ。付き合え」
「何でっ!」
「新しいゲーム借りた」
「何っ!?」
思わず嬉しそうな顔をしてしまった私を、してやったりの顔で見る克幸。