アイツは私の初彼氏


「……じゃあ帰る」

 私は伊波家の玄関で、克幸を見ないで目線を足元に落として言った。

「また明日。おばさんにごちそうさんって伝えてくれ」

「分かった」



『また明日』

単なる挨拶の言葉だけど、妙にドキッとしてしまう。

何が、また明日?と思うのは、期待というヤツだろうか。

そして私は何を期待しているんだ?



ていうか『期待』ってなんだよ!

自分で考えた事に、思わず私の顔が熱くなる。

私は慌てて家に駆け込むと、声をかけてきた母さんへの返事も適当に部屋に逃げ込んだ。



結局その日は、ビーフシチューを食べる事なく眠った。

昨日ロクに寝てなかったのと、考えすぎて疲れたってのがあって。

それもこれもみーんな克幸のせいだ!

夢の中で会ったら背中に攻撃してやるからな!

そんな事を考えながら寝た。


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