アイツは私の初彼氏
「どうせまた沙織が先に怒りだしたんだろう?謝ってきたらどうだ」
そう言ったのは父さんだ。
新聞を広げながら、コーヒーを飲んでいる。
まったく、みんな好き勝手言ってくれるよ。
怒りっぽいのは認めるけど。
「ケンカじゃない」
とりあえず、そこだけは否定しておく。
私は自分の席に座ると、こんがり焼けた食パンにかじりついた。
「それにしても最近、かっちゃんってばカッコ良くなったよねぇ」
かお姉がそう言って、嬉しそうに笑う。
「確かに!将来は有望よね」
しお姉が何度も頷いてみせる。
「小さい頃はさおよりチビだったのに、高学年から伸び始めて今ではあの図体だもんね」
確かに。
昔は私の方が背が高かったんだっけ。
でも瞬発力はあって、一緒にサッカーやってもいつも前を走っていた。
それがいつからか走る事に興味を持って、中学で陸上部に入ったんだよな。