アイツは私の初彼氏
「克幸っ!」
さっきより近付いてはっきりした声で呼ぶと、私を2度見した後で目を見開いた。
「……さお、か?」
「そうだけど」
「……」
克幸は上から下まで私を見ると、パチパチと目を瞬かせる。
「こんなカッコで悪い。朝から姉ちゃん達に叩き起こされてさ、そのまま放り出されたから」
私は改めて恥ずかしくなって、思わずうつむいた。
「いや……」
言いよどむ声に克幸の方を見ると、目が合った途端そらされた。
「別にいいんじゃないか?」
その顔がちょっと赤い様に見えたのは気のせいだろうか。
「でも、女装なんて」
「はは、女装って。お前女だろ」
「ヒラヒラするし、髪はうっとおしいし、目はなんかバチバチするし」
照れ隠しに次から次へと文句を言う私に、克幸は笑いっぱなしだった。