アイツは私の初彼氏


慌てて断ると、答えが予測出来ていたのかニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。

「へぇ、お姫様だっこの方がいいのか」

克幸は『お前もオンナだったんだな』と頷く。

「い、良いわけないだろ!」

私が怒ると、克幸は笑ってみせた。

けれどその腕は引っ込めない。
更に、つかまる様にとアゴで示す。

仕方なく、私は克幸の腕につかまる事にした。



 帰り道、私達は無言で歩いていた。

克幸は私の進むペースに合わせてゆっくり歩いてくれている。

そんなさりげない優しさが何だからしいなと思えてしまう。

私はふと、6年前の事を思い出した。

10才のあの時、私はサッカーで足を怪我してしまい、その時もこうして克幸に家まで送ってもらったっけ。

もっともその時は、腕組みじゃなく肩を組んでだったけど。



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