アイツは私の初彼氏
「落ち着け!」
急に克幸が出した大声に驚いて、ビクッと身体が反応する。
「な、何だよ。そんな大声出すなって」
焦りを隠す苦笑いを浮かべる私を、克幸は静かに見た。
「う……」
私は、目を合わせられなくて下を向く。
しばらくの沈黙の後、克幸が口を開いた。
「さお、だいたい分かったがそれは誤解だ」
「……誤解?」
私は恐る恐る目線を少し上げた。
怒っているかと思った克幸は、困った様な表情を浮かべている。
「森崎は確かに俺と化学室で話をした。けどそういうのじゃない」
「でも私に手紙持ってくる女の子とおんなじ様な顔してたし」
「……そうかもしれんが俺に向けてじゃない」
「はぁ?」
克幸の言っている事はますます私を混乱させるだけで、要領を得ない。
「仕方ない。その代わり本人には言うなよ」
盛大にため息をついた後、克幸はそう言って声をひそめた。