アイツは私の初彼氏
そのまま急ぐ様に高木の元から離された私は、ふと目線をやった時にヤツが最後に嬉しそうに笑ったのを見た。
「へぇ、彼女……気付かなかったなぁ」
学食を出た克幸は、私の腕を放すと無言で歩き出した。
「克幸、どーしたんだよっ」
私が聞いても、アイツは無視を決めこんでいる。
「克幸、あの高木の言ってた『あの子』って―――」
「アイツには近付くな」
「えっ?」
やっと何か言ったと思ったら、何だそれ。
「別に近付かないよ。話すネタもないし」
大体どんな男子とも話すけど、何となくアイツは苦手だ。
何ていうか、あのノリにはついて行けない気がする。
「……なら、いい」
私の返事にそう返した克幸は、その後も無言で教室へと歩いて行った。
何だよ、ったく。