アイツは私の初彼氏
夕方のホームルームの後、ざわつく廊下の方に目をやると人だかりが出来ていた。
それも、女子ばかりの。
「……あ、アイツ」
その群集から頭一つ出ていたのはあの高木だ。
ヤツは教室内を見回し、私と目が合うと大きく手を振った。
「葛原さん!ちょっといい?」
その途端に女子の視線が一斉にこっちを向いた。
ええっ!?私?
「ちょっとさお、あのチャラ高木といつ親しくなったのよ」
慌てて駆け寄ってきた旭がそう聞くけど、私にはそんなつもりは毛頭ない。
無視しようにも、こんなにみんなに見られてはそうもいかない。
私は旭に『行ってくる』と言うと、他の女子をかき分けて高木に近付いた。
「……何?」
廊下で、短くそう言う。
すると高木はにっこりと笑って、『あっちで話そうよ』と言った。