滅 ―不良と不良の恋愛論―
藍と珀はドアの前に立つ男を凝視して固まる。
クラスメートはガタタッ、と音をたて椅子から立ち上がり、どこぞの店員も真っ青の見事なお辞儀をする。
「「ちわっす!総長!」」
「……あぁ。」
上に立つ者のオーラ、とでも言うべきか、
「藍。」
「っ…、!」
髪と同じ、深い闇色の瞳と目が合い、
甘く低い声で名前を呼ばれたら、
逃げ出したくなる。
「秋月漆夜…、何で…。」
呼吸が難しい。
水の中にいるように、闇に溺れるような、そんな感覚。