CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
3.Basement
夜になってアボジ(親父)も帰って来た。
騙して済まなかったと、頭をポリポリかきながら謝るアボジは、全然済まなさそうには見えなかった。
少しずつ力の解放が始まっているみたいだ。
さっきから、頭痛を伴いながら、アボジやハラボジの上にビジョンがボヤけて見えたりしている。
「アボジ、頭が痛いんだけど、頭痛薬有りますか!?」
『こればかりは、頭痛薬を飲んでも効かないよ。
俺だって若い頃、この頭痛に悩まされて薬飲んだけど無駄だったさ。
頭痛を抑えるには、気を集中して、余計な思念や感情をシャットアウトするしか無いから。
座禅を組んで、両手の指を軽く組んで、ヘソの辺りで手の平を上に向けて、全身の力を抜いてみな。
そして、鼻から息を吸って、ゆっくり口から息を吐き出す呼吸法をやると頭痛が和らぐはずだよ。
その時は、何も考えずに、ただ一点に集中する事。
このローソクに火を着けて、その炎を見ていなさい。』
「分かりました。」
俺は、アボジの言う通り、座禅を組んで指を組んでローソクの炎を見ながら、ゆっくりと呼吸していった。
不思議なもので、5分もすると頭痛は治まってきた。
『どうだ!?
痛みが消えていっただろう!?
慣れてくれば、見たいビジョンだけに集中すれば、それだけが見えて、頭痛や吐き気も無くなるから。
まぁ、複数のビジョンを無理して見たりしなければ、頭痛もそのうち無くなると思うよ。
それから、コントロール出来るようになるまでは、興奮している人間の近くには近づかない様にしろよ。
メチャクチャ危険だからな。
アッと言う間に意識を持ってかれるぞ。
相手の感情が、頭の中に大量に流れ込んでくると、理性が利かなくなり、その人間の感情に支配されて仕舞うことも有るから。』
ハラボジやアボジの話を聞いていたら、余計に頭が痛くなりそうだ!
とにかく、二人の言う通りコントロール出来るようにならなくっちゃ!
今でも少しずつ、力が解放されつつ有るんだから、明日の夜中になったら大変だろうなぁ。
そして、翌朝7月6日
朝7時に目が覚めた俺は、顔を洗った後リビングにいるハラボジに呼ばれた。
『チャンスや、今ちょっと意識を集中して、ワシのビジョンが見えるか試してみてくれ。』
「分かりました。
やってみます。」