CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
しばらくしてから、リハーサルの再開だ。
彼女は、先程とは打って変わってリラックスした素晴らしいマイクパフォーマンスを披露している。
今回の彼女は、司会進行というだけでなく、アカペラも披露するし、ダンスだって見せてくれる。
出場メンバーのプロフィールだってバッチリ記憶して、タイミング良く紹介していかなければならない。
1人のアナウンサーではなく、観客を魅了するパフォーマーとしての出演者なのである。
だからこそ、難しいのだ!
新星MUSICは、普通の誰でも出来るようなものは、求められていないのだ。
以前、木村アナ(イクチャン)がKYUのデビューライブでアシスタントをした時だって、終わってから足が震えて涙が止まらなかったって言っていた事が、今ならわかる気がする。
リハーサルが終わると、チャンスが遣ってきた。
「桧山マネージャー、さっきの杏奈さんのマイクパフォーマンス良かったですよね!」
『そうだな!』
「ヤッパリ愛の力ですよね!」
『な、何の事言ってるんだ?』
「とぼけないで下さいよ!
杏奈さんにコクったんでしょう!?」
『バ…バカな事を言うんじゃないよ!』
「XYZのメンバー、全員見てましたよ!」
『エッ~!!!
何で?』
「だって、桧山マネージャーが杏奈さんを連れて出て行ったんだから、こりゃあ見ない訳にはいかないですよ!」
『いつから見て………』
「最初から最後まで全部見させて頂きましたよ!」
『あ…悪趣味な!』
「ハハハハハ…!」
『まぁ、そういう事だ!』
と、苦笑いをしながら小さく言って頭をポリポリかいている。
「おめでとうございます。
やっと想いが通じ合いましたね。
結婚式には、俺達がバッチリ演奏して盛り上げますからね。」
『気が早いよ!
まだ始まったばかりだし、これから先どうなるか分からないんだから。』
なんて嘘ぶいているから、俺は封印の指輪を外して、桧山マネージャーの未来を覗いてみた。
すると、来年の春に結婚式を挙げて、直ぐに双子の女の子を出産していた。