CHANCE 2 (後編) =Turbulence=




俺は今、江南区・三成洞(カンナムグ・サムソンドン)にやって来ている。


江南区と言えば、ソウル市内で最も芸能事務所が多い所で、プロダクションを構えるならば江南区と言うのがステータスみたいになっているのだ。


中でも、三成洞(サムソンドン)が最も芸能事務所が集中している街である。


俺は、自分の不思議な能力を封印している、特殊な指輪を外して一人の情報屋の居る雑居ビルの一階にある喫茶店に入って行った。


情報屋は、テギル(大吉)君の叔父さんからの紹介で、金にさえなるならどんな情報でも集めてきてくれるそうだ。


俺は昨日彼に、最近株の買い占めに関係ありそうな企業や個人のリストアップと、新星musicに敵対視している企業に付いて調べて欲しいとだけ大雑把に頼んだのだが、早速朝一番に連絡が入って来て、ここの場所を指定されたのだ。


何となく嫌な予感はしたが、とりあえず用心しながら、古ぼけた喫茶店の入口に近い席に座り情報屋の金(キム)が遣って来るのを待った。


約束の時間ちょうどに、彼は現れたがかなり挙動不審である。


しきりに周りを警戒しているが、尋常では無い。


「金さん、こちらです!」


『チャンスさん、かなりヤバい事になっています。

ここではなんですので、表に止めてある車で移動しながら話をしましょう。』


と言って、直ぐに喫茶店から出て車に乗り込んだ。


俺も彼の後に続いて乗り込んでいった。


「どちらに向かっているのですか!?」


『今向かっているのは、あなたの会社です。

今はあそこが一番安全だと、俺のアンテナが言っていますので!』


「判りました。

それで、何か判りましたか?」


『ハイ!

新星musicの株を買い占めているのは、中国のマフィア青紅(チンホン)が運営している芸能事務所、大楼芸能公司です。』


「大楼芸能公司っていったら、中国でも最大手の芸能プロダクションだが、余り良い噂の聞かない処だよな!」


『そうなんです。

あそこは、阿片や売春は当たり前だし、タレントマネージャー達は全員マフィアの構成員ですから。』


「どうして、ウチの株なんか買い占めてるんだ!?」
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