CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
第6章 Big Trouble
忙しいスケジュールの合間を縫って行われたベストアルバムの録音も、ゴールデンウィーク中に無事終了した。
いまは、マスタリングスタジオで本堂さん達が編集してくれているだろう。
今日は久しぶりに登校している。
俺とジョージは文Ⅲ(教育学部)だから、1・2年生の時も殆ど本郷キャンパスで、持ち出し講義の時だけ駒場キャンパスに40分掛けて電車で移動していたが、テジュンやケントは、1・2年生の時には、ほぼ駒場キャンパスだから、なかなか学校で会うのは難しかったのだ。
3年生になって、ようやく教養学科も終わり、テジュンもケントも本郷キャンパスに遣ってきたのだ。
だから俺達は、暇なときには教育学部にあるラウンジと呼ばれる休憩室でタムロしていたが、一般生徒が遠巻きに俺達を眺めてキャーキャー言っているのだ。
俺は、3年生になってから教育心理学コースを選択して、教育・心理・身体について学んでいる。
教育学部だが、教師になるための資格をとらないならば、はっきり言ってメチャクチャ楽勝である。
教員免許を取得するためのカリキュラムを全てパス出来るから、緩いスケジュールで授業(講義)を選択出来るのだ。
だから、XYZの活動がオフの日は、必ず大学で講義を受けて、単位取り巻くりの日々を過ごした1年間であった。
そして4年生になったときには、必要な単位はゼミのみとなったのだ。
3年生の時には、放送とメディアリテラシーと言う授業が一番好きであった。
この授業は、NHKの現職のディレクターが講師で、放送に関する様々な知識、特に作り手としての知識を教えてくれたのだ。
本郷の赤門から左へ少し行った所に
「福武ホール」という建物がある。
そこの地下にあるラーニングシアターという大きなホールで授業をするのだ。
そこでは授業中、スクリーンで様々な映像を見ることができるのだが、日々とても忙しい俺とジョージ、気が付けば寝てしまっているのだ。
教育学部でも、この講義を選択しているのは25人だけなので、メチャクチャ目立ってしまう。
教授から良く、
『高山、森本の両名は、講義が終わったら私の部屋にこの資料を戻しておくように!
貴重な映像を前にグーグー寝てたんだから、体力も余っていることだろう!』
なんて言うもんだから、
「すみませんでした。
ちゃんと片付けておきます。」
と言い、教授と放送局から遣ってきたディレクターに頭をさげ、教壇に置いてあったブルーレイディスク数枚と分厚い専門書を数冊、ジョージと2人で分担して持ち10数分掛けて藤本教授の研究室に遣ってきた。