CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
ボチボチ歩きながら学生支援センターまでやってきた。
そこにいたのは、霜山教授。
臨床心理学の教授である。
「失礼します。
藤本教授の使いで参りました。
昨日貸し出ししたDVDの回収に来ました。」
『オッ、高山君!
先週のゼミに来なかったな!
今週はちゃんと出席して下さいよ!』
「…はい…教授。
あっ、このDVDですね!
それでは、これは返却しておきますので。」
『それと、ついでにこのプリントなんだが、藤本教授の研究室に持って行っといて欲しいんだが良いよね!?』
「はい…分かりました。」
と言うと、霜山教授は横に有った50cm四方程の箱へ、どんどんとプリントを詰めていってほぼ満杯になった頃に、グイッと俺の方へ押しやってきた。
『これ全部ですか!?』
「そうだよ。
藤本教授の講義で使うんだが、私に依頼してきたのが出来上がったからね。
多分、来週か再来週の講義で使うんだと思うよ。
Sentence Completion Testって知っているかい!?」
『文章完成法ですから、……投影法ですよね!?
不完全な文章を提示して、それに続 く言葉を自由に書かせる検査法だったと記憶してますが……。』
「さすがに高山君は、講義に出て無くても予習が出来ているな!
まだ習って無いはずだが、いつ勉強してるんだい?
忙しいだろうに。」
『臨床心理学は、以前から興味が有ったので、高校の頃に佐野・槇田両博士の精研式SCTに関する書物を読みあさった事が有るんです。』
「高校の時にかい!?
ずいぶんと難しい書物を読んでたんだね。」
『父が会社を経営してますが、企業の中で、この投影法がかなり利用出来るんだと聞かされ、いずれ私が後を継ぐのだから、自由な時間が有る間に覚えておこうって思い勉強したわけです。』
「そうだったのか。
たしかに、臨床心理学の中で、この投影法は社会に出ても利用出来るし、文章完成法って言うのは、そのテストを用いれば、その人の性格や考え方や知能、その人のパーソナリティ全てがわかり、大きな会社では各部署での、適正なんかを調べるのにも利用されるんだよ。」
『だけど、なんでそれを藤本教授の講義でやるんだろう?』
「そりゃあ、映像を用いればもっと鮮明な内容が伝わるし、途中までの映像を見て、その続きを想像するって言うのは、まるで毎週見ているドラマの来週を予想するみたいで、その結末がどうなるかは、君達が自由に描けるんだよ!
皆がみんな別々の結末を考えるのって、メチャクチャ夢があって面白いとは思わないかい?」