CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
2. Graduation - XYZ
XYZのメンバーは、大学に在籍中のみの活動で、卒業すればそれぞれ違う道に進む事は最初から決まっていた。
四年生後期に入り、同級生達は就職活動もピークになって、日々走り回っている。
家の稼業を継ぐ俺達は、全く焦っていないが、ケントはフランスへの料理の為の留学の手続きに奔走中である。
テジュンは、辻美里(シフミリ)との結婚の準備をコツコツとしていた。
ジョージも堀井那奈との結婚を目前に控えて、卒論が終わらないと嘆いていた。
俺は、XYZの活動が無いときには、出来る限り新星MUSICの常務としての職務に従事していた。
KYUは、いつでもソロで遣っていける様に、最近では1人での仕事のオファーも桧山マネージャーは用意してくれる。
日本全国ドーム球場でのライヴは、去年遣ったからと、今年は全国ライヴツアーを春と秋の2回やり、48都道府県を回った為、殆どデートが出来なかった。
後は、歌謡音楽祭、クリスマスライヴと、年跨ぎカウントダウンライヴ、そして解散コンサートだ。
4枚目のチャレンジアルバムは、オール英語歌詞のハードロック祭りなCDが出来上がった。
去年の60年代のロックンロール風チャレンジアルバムからの流れでそうなったのだが、なかなかの出来映えに本堂さんも納得の1枚が完成したのだ。
そして正月を迎え、俺達の持っているレギュラー番組も、新たなメンバーへ引き継ぎが始まった。
ラジオ番組は、CALMが担当する事になった。
MUSIC HISTORYは、XYZの代わりにアイドルユニットのTwinckeとCALM、小柳杏奈アナウンサーの代わりに中山美姫アナウンサーが、KYUと一緒に遣っていく事になった。
2月に入り、全員で作詞作曲して、毎日遅くまで練習する日々が続いていた。
月末になって、ようやく今は最後の追い込みでCDのレコーディングの最中である。
XYZとしての大学在学中最後のレコーディングである。
このレコーディングが終われば、さよならライヴツアーに突入する。
東京ドームをかわきりに、大阪、名古屋、岡山、広島、博多と南下していき、中3日空けて札幌、盛岡、横浜と来て、最後は日本武道館で2日間連続ライヴが予定されている。
この2週間が終われば、大学の卒業式が待っている。
今は、安田講堂が改修工事中なので、今回の卒業式は、江東区にある有明コロシアムで3月26日の火曜日に行われると案内がきていた。
新星MUSICのメインスタジオ地下1階
レコーディングの合間の休憩室で、
『チャンス、ホントにミュージシャン続けんの?』
「まぁな!
新星MUSICのタレントとして、ソロのギタリストのチャンス・Kとして暫く活動する。
KYUとのユニットとしての活動も計画してるし、色々なバンドのライヴにも参加の予定が入っているんだ。」
『ソナとの結婚は、どうなったんだ?』
「あれ?
テジュン聞いてないの?
結局、ソナが大学を卒業するまで延期になったんだぜ!」
『マジで?
知らんかった!
この頃ぜんぜん兄貴には、何も話さないからなぁ。』
「俺んとこだって、たまに実家に戻っても、ソラは口を開けばKYUの事ばっかりで、俺の事なんて無視だぜ!」
『おいらんとこは姉貴がいるけど、いちいちかまってくるからうっとおしいのら!』
「そう言えば、ジョージんとこの姉ちゃんって、着付けの悠輝先生ともうすぐ結婚するって言ってたよな?
ジョージと那奈ちゃんの結婚と一緒にするって本当?」
『そうだよ~ん!
大きな所借りて、560人くらい来るんだけど、そこでうちの身内は全員、うちの新作の着物を着て出席するんだじょ!』
「まるで着物展示会ならぬ、ファッションショーみたいだね。」
『それじゃ、那奈ちゃんの身内は皆がHORIIのランジェリー付けて出席すれば‥‥‥‥‥』
「ケント、何言ってるのら?
ナナちゃんの下着姿想像したらダメだじょ!
おいらのものなんだから。」
ワイワイ遣っていたら、あっという間に休憩時間は終了して、レコーディング再開だ。
『おっと!
もう、こんな時間に!
皆、休憩終わったぞ。
そろそろスタジオに戻ろうぜ?』
「ああ。」