CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
翌日、XYZとして最後の仕事も終わり、アボジ(親父)の見舞いに行った。
担当のドクターが、ナースステーションで看護師に色々と指示をだしていた。
俺は、アボジ(親父)の事が気になったので、そのドクターのビジョンを覗いてみる事にした。
過去のビジョンの中から、アボジの検査後のビジョンを見つけ出した。
ドクターは、アボジのカルテにMKと記入していった。
この略語の書き方は、以前遣ってた病院のドラマん中で、ドクター役の山崎幸次郎が書いていたので覚えていた。
MK、それは(マーゲン・クレブス)の略語だ。
あまりの事にショックで、言葉も出なかった。
マーゲン・クレブス
それは、胃癌のことを意味する。
アボジが胃癌?
そんなバカな!
おれは、おぼつかない足取りでアボジの病室へと向かった。
病室には、オモニ(お袋)の代わりにソラが来ていた。
「アッ、お兄ちゃん!
お疲れさま。
もう仕事終わったの?」
『今終わって、皆と別れてきたとこ。
オモニ(お袋)は?』
「家帰って、お風呂入ってから少し仮眠取ってからまた夜に来るって!
KYUオッパは?」
『桧山マネージャーと一緒に関東テレビに行ってる。
来週末、放送のバラエティ番組のゲスト出演。』
「な~んだ、つまんない!
こっちに一緒に来るかと思ってたのに‥‥‥」
『2時間ぐらいで終わって、俺のマンションに来ることになってるから、後でソナと一緒に俺のマンションに行っといて!
俺は、オモニ(お袋)が来るまでここにいるから。』
「分かった。
じゃあ、新星MUSICに行ってバイトしてくるね!」
『オゥ!
気を付けてな!』
元気良く手を振りながら妹のソラは出ていった。
ソラが出ていったら、寝たふりをしていたアボジ(親父)が、
「チャンス、おはよー!」
なんて白々しい挨拶をしてきた。
『何で寝たふりしていたんですか?』
「アレ?
バレてた?」
『バレバレですよ。
ソラが、KYUオッパは?って言った瞬間にピクッって動いて、分かりやすすぎですよ。』
「だって、起きてたらハヌルちゃん(妹のソラの本名)が、アッパ(パパ)大丈夫?ってずっと心配しているから、気を使わすじゃん!」
『じゃん!って‥‥‥‥‥
兎に角、今回はゆっくりと治療に専念して下さいね!
お医者さんからは何て言われたんですか?』
「働きすぎからくる貧血と、ストレス性の軽い胃潰瘍だって!
まぁ、直に良くなるって!
チャンスは、何も心配しないで、自分の仕事をしっかりやってなさい。
お見舞いも、ずっと居なくても大丈夫だから。
一応、完全看護の病院だぜ!
無理言ってヨンミちゃんに居て貰ってるけど、本当は付き添い必要無いんだから。」
『それで、いつまで隠しておくつもりですか?』
「何の事言ってんだいチャンス?」
『 マーゲン・クレブス。
アボジ(親父)、胃癌なんだろ?
隠さないでくれよ。』
「な~んだ!
俺のビジョン見たのか!
だったら分かるだろ。
もう、半年以上前から胃の調子が悪くて、ソウル医大病院で診断受けた時には、胃の半分近くは癌に侵されていたよ。
胃を全摘しても、助かる見込みは五分五分って言われたさ。
それなら、手術要らないって断ったよ。
今は、薬で進行を抑えて貰ってるけど、ただの気休め程度にしかならないよ。」
『どうして今までほうっといたんですか?
出来る事は何でも遣って、生きなきゃ!
オモニ(お袋)は知っているの?』