CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
『いつ頃のって、チャンス!
お前は、自分の国の歴史も知らんのか?』
「だってハラボジ、朝鮮王朝の王の名前なんて、いちいち覚えないですよ!」
『ちょうど、豊臣秀吉の時代じゃよ。』
「だいたい分かりました。」
『ある時、豊臣秀吉が朝鮮に攻め入り、明までの道案内をしろと言ってきたんじゃ。
それが文録の役って言って…』
「1592年でしょう。」
『そうじゃ。
当時52才だったイルウは、それを予知していていたんじゃ。
宣祖王は豊臣軍に追われ明へ逃げる為に、イルウは厩舎に在る馬車を大殿の裏口に出したと書かれておる。』
「馬車をですか!?」
『そうじゃ。
宣祖王を助ける為に、馬車を次々と4台も出したとある。』
「凄い力を持った人だったんですね!」
『豊臣秀吉がいつ亡くなるかも予言して、それを気に豊臣軍が日本に撤退する時期も分かっていた。
だからこそ、そこまで耐えて、国を建て直せたと書いてある。
ビジョンもピッタリと曜日まで当てていたとは、ホントに大したもんじゃ!』
「じゃあ、このギターも間違いなく日本からテレポート出来たんですよね!
物体の記憶を読み取る事も出来ましたよ!
ハラボジは、ハルモニの作るタラのチゲが大好きだったんですよね!」
『何故それを!?』
「そこにある李朝の小盤(ソバン)の記憶を読み取りました。」
『そっかぁ!
じゃあ、賢淑(ヒョンスク)はどうだった!?』
「若い頃のハルモニ(お祖母さん)は、ハラボジを見ながらニコニコしていました。
とっても幸せそうでした。」
『そっかぁ!
17才で我が家に嫁いで来て、ずいぶん苦労させたからのぉ。』
「ハラボジは、ハルモニの作ったタラのチゲを食べながら、とっても満足そうにハルモニを誉めていました。」
『なんか照れるのぉ。
あんまり我が家の物には触れるなよ。
そこらかしこにワシ等の思い出が詰まっておるからのぉ。』
「ハハハ……。
分かってますから。
ところでハラボジ、ある程度なら力をコントロール出来るようになりましたよ!」
『それじゃあ、ワシ等二人の前で力を開放して、ワシだけのビジョンを観てみるかい!?』
「分かりました。
やってみます。」
と言い、心の中で
《開放…!》