CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
頭の中では、一番太い弦のE弦のみを開放して、軽く弾くイメージをした。
そして、ハラボジを見ると、右肩の上には韓国の盧前大統領と経済に付いて話し合っていた。
続いて左肩の上を見てみると、やっぱり泣いているハラボジが……。
しかし、今回ははっきり見えた。
ハラボジが握っていた黄色い物は、ノリゲ(韓国のチマチョゴリを着た時に付ける帯飾り)だった。
そして、頭の中で
《ミュート!》
と言って、6弦全てを指でミュートするイメージをしてから、
「ハラボジ…!
未来で、またハラボジが泣いているのを見ました。
過去は、はっきり見えたのですが、なんだか変なんですよ。」
『どうしてじゃ!?』
「何故だか分かりませんが、ハラボジが盧前大統領と、経済に付いて話し合っていたんですよ。
そんな事って…」
『有るんじゃよ!
ワシはな、盧大統領の顧問をしとったんじゃよ。
大統領に就任して直ぐの頃、ワシの占いの舘に突然お忍びでやって来てな、
《良く当たると聞いてやって来た。
これからの韓国の情勢を占ってくれ!》
って言うから、ここソウルでオリンピックが開催されて、一気に景気が回復するから、それを期に自由貿易に向けて頑張りなさいって教えてやったんじゃよ。
それからと言うもの、行き詰まったら相談に来るようになったんじゃよ。』
「ハラボジが……。
大したもんだなぁ!」
『まぁしかし、あの男は良く占いの舘にやって来たぞ。
国家間の問題まで、ワシに聞いて来る始末だよ。
ある日、大統領が捕まるビジョンが見えてな、ワシはあの男に、贅沢な生活を止めて、慎ましく生きなさいって苦言したんじゃ。
元々軍人から大統領になった割りには、気さくな感じだったし、真面目で人の話を良く聞く男だったんじゃが、大統領になって少しずつ変わっていったんじゃ。
粛軍クーデターや光州事件で調査が入っているのに、大統領在任中に不正蓄財をしおって、結局退任後に懲役をくらったよ。』
「その時俺は、まだ5才くらいだったんだよなぁ。
アボジが、大統領が替わったから、韓国もまた変わっていくんだって言ってましたよね。
アボジも見えていたんですね。」
『あぁ!
その当時、盧大統領は耳が大きな私は、人の話を良く聞きますって言ってたけどダメだったよ!』