CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
「ところでアボジ(親父)、ミスター リーさんとは、どこで知り合ったんですか?」
『今さら聞くか?
チャンス、お前は何度も彼の顔写真を見たことがあるんだぞ。』
「エッ?
今日初めて会ったのに?
ダメだ!思い出せない。」
『会社の私の部屋の壁に写真が掛かっているじゃないか!
ナナちゃんとミリちゃん以外は、全員その写真を見たことがあるはずだが!』
「オイラ分かったのら!
チャンス、俺達の先輩XYZなのら!」
『あ~ァァァ!
思い出した!
初代XYZのドラマーのリーさんだ!
どうしてハワイに住んでるんですか?』
「ハハハ!私は元々アメリカ系韓国人なんだよ。
私の母は、ハワイ生まれのハワイ育ちで、この村の村長の娘だったんだよ。
父さんが仕事でハワイを訪れた時に、母と知り合ったそうだ。
直ぐに恋に落ちて、私が生まれたんだよ。
親父の仕事の関係もあって、小さい頃はソウルに住むハルモニ(お祖母さん)のところで生活して、韓国の学校に通っていてたんだよ。
弘益大付属高校ん時に、賢主(ヒョンジュ:チャンスの親父)と知り合ったんだよな?」
『そうそう、露彬(ロビン)なんてふざけた名前は珍しかったし、ましてやハワイ系アメリカ人とのハーフってだけで、どんな奴だってんで、隣のクラスに見に行ったんだよな!』
「そうだ!
チャンス君、君のお父さんはね、初対面でいきなり俺にケンカ売って来たんだぜ!」
『アボジ(親父)、本当ですか?』
「兎に角、俺よりモテてた奴は生意気だ!って、潰しに行ってたからなぁ~」
『ヨボ(貴方)、私恥ずかしいわ!』
「チャンスのパパって、若い頃はめちゃめちゃオチャメだったんですね。」
『ソナ、俺はそんな父親の血をひいているが、もっとまともだかんな!』
「オイオイ、皆して俺を変人扱いか?」
『若気の至りだよな!』
「露彬(ロビン)、フォローになってないからな。
まぁ、そんなこんなで友達になって、もっとモテるためにってバンドを始めたのが、XYZの始まりだったんだ。」
『まぁ、見事に【ヤクソク】だけは大ヒットしたよなぁ。』
「俺の作詞作曲が良かったんだろうよ。」
『確かに良かったな!
でも、ベースの韓(ハン)がアレンジの得意な兄貴に頼んでもらって、それで一段と良くなったもんな。
韓(ハン)の兄貴って、今何遣ってんだろうなぁ?』
「彼なら、うちの会社でアレンジャーの先生って呼ばれながらふんぞり返っているぞ!」
『エッ?アボジ、アレンジャーのミスターハン先生って弟がXYZのメンバーだったの?』
「そうだよ。
彼の弟とミスター リーと俺と、そしてもう1人、タラシの裴(ぺ)なんだけど、裴(ぺ)は今どこで何をしてるか分かんないんだよな!」