CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
『済まなかったな!助かるよ。
早速、署に戻って絞り込みを始めるよ。』
「この台帳がお役にたてれば良いのですけど。」
『まぁ、身分証明書自体が偽造で、この台帳に載ってる名前が偽名なら、それはそれで、そこから何らかの情報やらが得られるってもんですよ。』
「そうですか。頑張って下さい。」
『それでは、これで失礼するよ。』
と、平田刑事は一礼して出ていった。
その日の夜も、俺はSeoul Nightに来ていた。
封印の指環を外し、力を半分程解放して店内の様子を伺っていた。
すると、一人だけ気になる男が居た。
スタッフの福田幹候(幹部候補生の略)である。
彼の過去のビジョンに良からぬ連中と屯(たむろ)しているビジョンが見えたのだ。
一緒にいる連中は、都内でも有名なチームの奴等だ。
最近、新宿三丁目辺りでも恐喝や窃盗、噂では藥なんかも扱っていると言う。
そんな奴等と、なぜ福田幹部候補生は知り合いなんだ?
俺は、もっとこの男のビジョンを見てみる事にした!
W大在学中、親に反発して出入りし始めたヤバそうなクラブ!
以前から目をつけていたと平田刑事も言っていた、チンピラが屯(たむろ)するクラブだ。
そこでマリファナパーティーをしていた。
集まっているのは、チンピラだけじゃなく、福田の友人の金持ちのバカ息子等も居た。
俺の知っている、家電量販店の社長の息子や、老舗旅館の息子も居た。
キャバクラのホステスみたいなのや、余り良い噂を聞かないホストクラブの支配人も、ビジョンに写っている。
マリファナパーティー以外にも、闇のカジノに興じていたビジョンさえも見えた。
その中に、被害者に脱法ハーブを売ったとされる似顔絵の男に良く似た奴が居た。
これはもう、ドアボーイをしている福田幹部候補生が絡んでいるのは間違いない。
俺は、警察が動く前に犯人を引きずり出すことにした。
俺は、店が終わるのを待って、福田幹候に巧く接触することにした。
「お疲れさん。
福田幹部候補生、仕事はもうなれましたか?」
『常務、お疲れ様です。
だいぶ慣れてきました。』
「そうか。
これからも頑張って下さいね。
ところで、この辺で朝まで遣ってるショットバーなんて知っているかなぁ?」
ビジョンで見えた渋谷のセンター街にあるショットバーが、彼のお気に入りの場所だと知っている俺は、彼に切り出したのだ。
案の定福田は、
『センター街のビルの地下にお洒落なショットバーがありますよ。
良かったら案内しましょうか?』
と、即効で食い付いてきた。
「良かった!
助かるよ。
それじゃあ、着替えてくるまで表で待ってるから。」
『直ぐに降りますので。』
と言って、足早に更衣室へと入っていった。
5分後、福田は白のカッターの上にお洒落な黒のベストと、カーキ色のカジュアルパンツにライトブラウンのワークブーツといったラフな格好で出てきた。
ラフでは有るが、なかなか巧く着こなしているし、良く見れば身に付けているのは、どれも高価なブランドである。
左腕には、ローレックスの腕時計をはめているし、胸元からみえるのは、クロム・ハーツの最新デザインのネックレスである。
俺は、そんな福田の頭の中に直接話しかけた。
<今から俺の言う事全てに従って下さい。>
そうしたら、福田は一瞬怪訝な顔で俺を見たが直ぐに頷いた。
「それでは、私に着いてきてください。」
と、俺が言うと
『はい。』
と、素直に返事をして俺の後に着いて俺の愛車エリシオンに乗り込んできた。
俺は、彼を助手席に乗せて車を深夜のカラオケ店【新星GTS渋谷店】の駐車場に入り停車した。
頭の中に、
<車から降りて、私に着いてきてください。>
と、もう一度話しかけると、福田は素直に着いてきた。