CHANCE 2 (後編) =Turbulence=





この大会は、15の関門があり、その関門を突破出来た者のみが、次の関門へと進めるのである。



第1関門は、その場で聴かされた様々な効果音を、即興でギター音で再現しなければいけない。


大体ここでは600人から200人くらいまでに振り落とされるのだ。



俺の前に並んでいた男性は、車の急ブレーキの音をギターで再現していたが、ビミョーに音が外れていた。



次は俺の番だ。


目の前のスピーカーから



【今から流れてくる音を、10秒以内にギターで再現して下さい。】



と機械的な英語が流れてきた。


そのあと、(ピロピロピロピー)と、トンビのような鳥の鳴き声が流れてきた。



俺はすぐにギターで再現した。



すると、【白い扉の部屋に進んで下さい。】とスピーカーから流れてきた。



俺は、言われた通り白い扉の部屋に入っていった。



そこの部屋のデスクの上には、Passage Through( 通過)と書かれた札が置いてあった。



1次関門通過で、デスクに座っていた男性からホテルのキーを渡された。



会場の向かいに建っているシェラトンニューヨークホテルのキーである。



そのキーを受け取り、ホテルに向かった。



明日は第2関門!



一体何を遣らされるんだろうか?



なんて事は考えずに、取り敢えず荷物を部屋に置いて、ラフな格好に着替えてから、1階のラウンジにやって来た。



到着して直ぐにエントリーしたのにも関わらず、第1関門を通過出来なかった人達は、そのまま帰路に着いているのだろうなぁ…



なんて考えながら、コーヒーを飲んでいたら、



『ミスターコウ!

ハウ アー ユー?』



いきなりバグしてきたのは、この大会に出場しているアメリカのレディースバンド【スパイラル ガールズ】のギタリスト兼ボーカルのベッキーことレベッカ ブレイアーだった。



彼女は、何度も日本に来ては俺達と一緒にテレビに出演したり、たまにライブでは友情出演をしたりする仲である。



レベッカの彼氏は、ABCテレビのプロデューサーをしている、トーマス コールズと言う男性で、うちのアボジ(親父)の友人でもあるのだ。



だから、何かにつけトーマスは日本に遊びに来るとうちに泊まっていくのだ。



彼女のレベッカも、良く一緒に来日していて、うちのソナやソラとも大の仲良しである。



「ベッキー、この大会に参加してたんだ!

ここに居るって事は、第1関門を通過したんだね!?」



『ミスターコウだって!

ミス ソナは?』



「彼女は日本だよ。

さすがに連れては来れないよ。

メディア関係者も沢山居るから、ここでこうしてベッキーと俺がラウンジで話しているだけで、変な報道されかねないからね!」



『私は、そんなの気にしないけどね!

友人とお茶してるだけで、何だって言うのよ。

雑誌カメラマンや記者なんかでも、適当なこと書いて腹立つけど、やましいことしてないんだから、私は堂々としてるわよ。』



「だよな!

ところでミスター トーマスとはまだ結婚しないの?」



『来年、全米ツアーが終わってから半年間、私達のバンドは活動休止するんだ!

まぁ、充電期間みたいなもんだけど、その時にハワイで挙式するんだ!』



「そうなんだ。

おめでとう!

是非呼んで下さいね!ソナ達とお祝いに駆けつけるから!」



と話は盛り上がって、気が付けば夕食の時間帯になっていた。



俺は、食事に行くのでとベッキーと別れて、一旦部屋に戻ってからこっちで使えるようにした専用の携帯電話とジャケットを手に、エレベーターでロビーに遣ってきた。



カウンターにルームキーを預けてから表に出た。




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