CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
大会9日目
第7関門は、指定されたジャンルのメロディーを、アドリブにて演奏すると言うこれまたお決まりの課題で、俺の順番が来たときには、カントリーソングが指定された。
俺は、フィドル(バイオリン)っぽい音よりも、バンジョーっぽい音を出すために、ピックアップよりもネック寄りでピックを使って演奏してみた。
16小節ほど演奏したところでOKが出た。
呆気なく通過したから、日本からのテレビ中継でも殆んど目立たないだろうなぁ。
ちょっぴり残念だが、それでもカメラに向かって一礼してから通過の札を受け取り、白い扉の部屋に入っていった。
その部屋からは、他の挑戦者の演奏風景がモニタリング出来るようになっていた。
Black & Blackのニックの番が来た。
課題は、ハワイアンときた。
するとニックは、ギターの弦全てを1音ずつ弛めて、如何にもハワイアンっぽいメロディーラインが流れてきた!
流石である。
彼も直ぐに通過して、こっちの部屋に入ってきた。
『ヘイ ミスターチャンス。
どうだった、俺の演奏?』
「ミスター ニック、最高にいけてたよ!
まさか、あそこで変則チューニングするとは驚いたよ。」
『なんとなくウクレレっぽい音も出てたろ?!』
「ウクレレとエレアコの中間っぽかつた。
アッ、弟のジムの番だよ。」
『あいつは、ホントに天才だからなぁ。
俺も、アイツくらいうまけりゃCDの売り上げももう少しいくだろうに。
いつも、やつらのバンドに負けてるんだよなぁ。
ビルボードランキングなんて、弟のバンドに勝った事無いんだぜ!』
「そうなんですか?
今度は、二つのバンド一緒にライブとか遣ったら面白いのに!
なんか、また違った面白さが有りますよ。」
『そうだな!
やってみっか!
おっと、ジムの奴スイングジャズだってよ!
出来るんだろうか?』
「エレキでスイングジャズですか!
基本は、セブンス コードですよね。
アドリブよりも、綿密な打ち合わせをしたアンサンブルで大編成での演奏が特徴なのに、いきなりのアドリブだし、ギター1本だけだし、こりゃ大変ですよ。
遠隔調への転調や内部転調も頻繁に用いるし、和音もディミニッシュト・コードやテンションがより積極的で且つ、システマチックに用いられるから、演奏者なかせですから。 」
『でも、E弦を巧くベース音のように演奏しながら、リズムを刻んでるぜ!』
「巧いもんですねぇ。
アッ、通過しましたよ。
さすが、前回の優勝者の貫禄ですね!」
『ミスターチャンス、君だってなかなかどうして、大したもんだよ。』
お互いに誉めあうのは、何かくすぐったい。