CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
『アッパ(パパ)、オンマ(ママ)、早くこっちこっち!
お兄ちゃんが出るよ。』
「ハヌル(チャンスの妹の本名=通称名はそら)ちゃん、今行くよ。」
《第6回Gold Strings、今宵は第8関門の模様をマンハッタンの大会会場からお伝え致します。》
大会の模様は、有名声優によって吹き替えられたVTRを2日遅れで日本全国に放送されている。
放映権は、何と新星グループがひまわりテレビとの共同購入で、ゴールデンタイムにひまわりテレビでオンエアされる事に。
そして
《今大会の優勝候補の一人、野村勝之さんも‥‥‥‥‥‥‥
元XYZのギタリスト、チャンスさんも健闘して‥‥‥‥‥‥‥》
『凄いなぁ!
お兄ちゃん、また勝ち進んだよ!』
俺?
どうにか勝ち残りました!
それにしても8時間耐久演奏、きつかったぁ~!
全くミスが許されない状態を、譜面と時計の両方とニラメッコしながら演奏して、漸く解放された時には吐き気と目眩を感じたよ!
《今回、ここまで残っていた紅一点のミス レベッカ、やはり女性には体力的に無理があったか?
残念ながら、ここで脱落!》
「アッパ(パパ)、ベッキーさん(レベッカの愛称)落ちちゃったよ~!?
多分ミスター トーマスも残念がってるでしょうね!」
『だろうな!
彼は、レベッカをとても愛してるから、彼女がガッカリすればトーマスも落ち込むんだよなぁ。』
「それにしてもお兄ちゃんは頑張ってるね!
もしかしたら優勝して、賞金1,000万円を持って帰って来たりして?」
『さぁ、どうかな?
本当に難しくなるのは、第11関門かららしいから。
前回優勝したジムだって、勝ったのはマグレだったって言ってたよ。
一歩間違えたら、直ぐに落ちちゃうのがこの大会だ!
あの時は、たまたま調子が良かったのと運が良かったのが重なったから勝てたんだ!ってのちのインタビューでも言ってたから。』
「そうなんだ!」
『それに、チャンスはお金には全く困ってないからなぁ!
なんたって、高山観光(株)で遣ってるSpot Lightチェーン店全15店舗の年間純利益だけでも10億円以上あるのに、音楽著作権の第1使用の他にも第2使用や第3使用で、年2回数億円が毎年入ってるんだぞ。
そう言えば、KYUと一緒にCM撮ったろ?!
あの車のCM、1本5,000万円だぜ!
一体、あいつはいくら稼ぐつまりだ?
だから、賞金なんて必要無いのさ!
どちらかと言えば、今大会に出たのも副賞のヴィンテージギターが欲しかったみたいだから。』
「ヴィンテージ ギター?」
『あぁ、優勝賞金とは別に副賞として、今回は1955年のヴィンテージギターが貰えるんだよ。』
「そんなに凄いの?」
『レスポールカスタムの1955年物て、ミントコンディション(ほぼ新品状態で、傷が2ヵ所以内の物)なんて、普通は中々手に入らないんだよ。』
「どうして?」
『コレクター達が中々手離さないからだよ。』
「そんな古いのって結構高いんでしょ?」
『あぁ、今回の物は普通で買うと250万円くらいするよ。
まあ、市場に出てくればだけどね!』
「やっぱりミントコンディションのヴィンテージは、誰かが手離さないとお金が有っても買えないんだね!」
『そう言うこと。』
「お兄ちゃん勝てるかなぁ?!」
ソラは、テレビの画面に映る大会挑戦者を観ながら、心の中で兄を応援していた。