CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
アボジ(親父)が、階段を慎重に降りてきて、大きなプレゼントを俺に差し出した。
「ギターですか!」
『さすがビジョンの使い手、中を透視まで出来るとは!』
「別に力を使わなくても、大きさから想像できますって。
それに、毎年楽器ばっかりプレゼントしてきたんだから、簡単に考えてギターだって言ったんです。」
『そりゃそうだな!
でも、今回のプレゼントは凄いぜ。
大事に使えよ。』
と言って、その大きな包みを渡された。
力を使う事なく、一気に包装を外したら、中から真っ黒なギターのハードケースが現れた。
備え付けのキーを使って、ケースのロックを解除して、ゆっくりとケースのフタを開けた。
『どうだチャンス、見たこと有るか!?
知り合いに拝み倒して譲って貰ったんだよ。』
「このギターに、幾ら使ったの?」
『そんな、誕生日プレゼントの値段を聞くなんて、そんな無粋な真似するなよ。』
「だってこれ!
1965年後期のヴィンテージ物だぜ!」
『良く知ってるな!』
「ましてや、シリアルNo.の入っているのは、メチャクチャ稀少価値高いんだから。
10万や20万で手に入る訳無いから。」
『このMosrite USA '65 The Ventures Modelって言うのは、良い音出るぞ。』
「誤魔化さないで下さいよ!
幾らしたんですか?」
『安い安い。
俺が1回飲みに行くのを我慢すれば買える金額だよ。』
「一体、飲み屋で幾ら使っているのやら。
相変わらずですねぇ、アボジは。」
『殆どキズも歪みも無いし、電気系統は同じパーツでの交換は出来なかったけど、限りなく原型に近い音が出るはずだから。』
俺は、アボジのビジョンを、コッソリ覗いてみた。
日本の某有名ギタリストから90万円で、このギターを購入していた。
こんなに良いギターを貰えるのは、有難い話だが高すぎるだろう!
安くても、良い音が出るギターだって沢山有るんだし……
まぁ、とりあえず
「こんなに良いギター、有り難うございます。」
『気にするな!
実は、ビジョンが見えたんだよ!
友人の家に遊びに行ったら、凄い沢山のギターが有ってさ、そいつがこのギターを手にした時に、ちょこっとビジョンを覗いてみたんだよ。』