CHANCE 2 (後編) =Turbulence=
ピン~ポ~ン!!!
『安心、安全、迅速がモットーのニュースターエキスプレスです。』
「はい、ご苦労様です。」
と扉を開けると、
『チャンス坊っちゃん!』
「ピ社長じゃなくて、鄭(チョン)社長!
社長が来られるなんて聞いてないですよ!」
『なんのなんの、チャンス坊っちゃんのお引っ越しなんですから、私が出向かない訳にはいかないでしょ。
御世話になっている高会長のご子息なんですから。
ハハハ!』
「何がご子息ですか!
もう、相変わらずなんですから。
スタッフに任せて、こっちで一緒にコーヒーでも飲みましょうよ。」
『コーヒーですか!?
コーヒーなら頂きたいですね。
坊っちゃんの煎れてくれるコーヒーを飲むのは、大学に合格して本郷のマンションに移った時以来ですよ!』
「そうだ!
あの時も、白金台の実家に社長自ら現れたんですよね。
お元気してましたか!?」
『はい。
会社は大きくなりましたが、相変わらず社長も専務も重役総出で営業も遣ってますし、現場に出てますから。
体を動かしているせいか、肩凝り知らずですよ。
チャンス坊っちゃんは、如何されてましたか!?』
「私も相変わらず雑務に追われながらのギタリスト稼業ですよ!
娘さんは、もう大きくなられましたか?」
『蘭 廈(ナナ)は、今年高校1年生になりましたよ。』
「そうか!もう高校生かぁ。
早いですねぇ。
彼女、モデルとかには興味ないのかなぁ!?
スタイル良いし、可愛いし、芸能界に興味が有ればお手伝いさせて頂きますよ。」
『いくらチャンス坊っちゃんの誘いでも駄目ですからね。
僕の娘は、大事に大事に育てて、家族3人でずっと一緒に暮らすんですから。』
「あちゃ~、うちの親父と同じだ!」
『チャンス坊っちゃんも、結婚して娘が生まれたら、私達の気持ちが分かりますよ。ハハハ!』
「そんなもんなんですかねぇ。」
『それじゃあ坊っちゃん、コーヒーごちそうさまでした。
荷物の積み込みも終わったみたいですから、行きましょうか!?
後は、アフターケアとして、ニュースターエキスプレスのスタッフが清掃から壁紙の張り替えまで全て遣っておきますので。』
「そんなサービスも遣ってるんですか!?」
『他社との区別化を計るには、出来ることは何でも遣っていこうって精神で22年頑張ってます。』
流石、俺のアボジ(親父)が見込んだだけの人である。
親父の、人の本質や能力を見抜く力は、俺の特殊能力以上である。
だから、うちの会社は凄い人材がゴロゴロしているのだ。